過去のゴールシーン

近年は交流重賞が盛んになり中央・地方の垣根なく幅広くレースが行われ、ダート戦線も毎年盛り上がりを見せている。ただ中央馬が続々と参戦し、ハイレベルな白熱した戦いを観れるのはいいが、地方競馬に携わる人間としては心情的に寂しさを感じる時も多い。それはやはり地方所属馬は交流戦では劣勢になりがちで、苦戦をしいられるシーンが多かったから。
そんな中フリオーソは2歳時から全国の強敵相手に果敢に挑み、結果を出してきた地方競馬の雄そのものだ。
帝王賞は、東京大賞典とならび南関東だけでなく、中央・地方からトップクラスの実力馬が一同に集結する全国注目のビッグレースであるのは言うまでもないが、そこでフリオーソは3回挑戦し、戦績は2勝2着1回とパーフェクト。地方・中央と変わりゆく勢力図の中、常に一線級と戦い、大崩れすることなく、現在まで結果を出し続けているは、凄いとしか言いようがない。
フリオーソは船橋でデビューし2連勝すると、平和賞2着の後強豪が集まる全日本2歳優駿を完勝し、全国にその名を知らしめる。その後は中央に挑み結果は出せなかったが、ダートに戻り羽田盃、東京ダービーではタイム差なしの接戦を繰り広げ、ジャパンダートダービーでうっぷんを晴らすかの様に好時計で快勝。雄大な馬体とまだまだ底を見せない走りはその時からすでに南関東を背負っていく風格すら感じたものだった。また、他場からの転入馬が増えているなか、生粋の船橋デビューということで一戦毎成長させていく陣営の手腕も賞賛すべきものである。
特に私の印象に残っているのは2010年の第33回帝王賞。前走はかしわ記念でエスポワールシチーには屈するも3着には4馬身差をつける2着と好走。しかし1年前のダイオライト記念から勝ち星は遠ざかっていたし、この年はヴァーミリアン、サクセスブロッケン、カネヒキリ、スマートファルコンなど、中央の名だたる実力馬がズラリと揃ったこともあり、帝王賞では人気も5番人気と伏兵的な評価となっていた。レースでは逃げる1番人気のサクセスブロッケンをガッチリマーク。トレードマークのブリンカーをつけ、首の低い走りはまるで獲物を狙うスナイパーのように虎視眈々と道中は2番手を進む。4コーナーで早めに先頭に並ぶ駆けるが、背後にはドッと中央勢が一気に迫ってきた。しかし直線は先頭に立つと最後まで脚色は衰えることなく、最速の上りで2着カネヒキリに2馬身半差の完勝劇。その強さだけが際立ったレースぶりに私は圧倒されるとともに、なぜか誇らしさ感じたのを今でも覚えている。

日刊競馬・市川俊吾