Project Episode
安全も正確性も楽しさも。
すべてを、
両回りで実現する。
東京都競馬株式会社 常務取締役
松田 芳和
開場以来ずっと、“右回り専用”だった大井競馬場で、
左回りレースも行えるように。
この大きな変化に伴い施設を改修していく上で、どのような困難やチャレンジがあったのか。
大井競馬場の施設管理を行う東京都競馬株式会社の松田芳和さんにお話を伺いました。
最初の難題は、「ゴールをどこに設置すべきか」
TCKで左回りコース導入というプランを聞いた時は、やはりびっくりしました。ただ、もし実現すれば多様なレースも開催できるようになりますし、大井競馬場の魅力が一段と上がると思いました。
最初に考えたのは、どこをゴールにするのかということ。それが一番大きな課題だと思いました。大井競馬場というのは、右回り専用でいろいろな設備が作られていますので、課題はありました。馬場そのものは右回りでも左回りでも変わらないのですが、やはりレースをやるとなると、どこを発走地点にするのか、どこがゴールになるのか、スタンドとの関係はどうなるのか、などいろいろな問題が出てきますので。
馬場だけ左回りにしても、レースはできない。
ゴール地点をどこにするのかというのが、その他のいろいろなことを決めていく上での基準になっていました。競馬が一番盛り上がるのは、ゴール前の直線です。ですからその直線の距離はしっかりと取らなければならない。なので、右回りコースのゴールをそのまま、左回りコースのゴールにはできないんですよ。ゴール板の位置が変わるとなるとゴール板の前に置かれる決勝審判室も新たに作らないといけないですし。右回りを基準に諸施設が作られていたので、左回りを導入するにあたって新しい設備や機器を作ったり、調整したり、連動させたり。そういうことが大きな問題になりました。
その次の段階では、調教をどうするかの検討ですね。いろいろな調教師の方々のお話を参考にしつつ、整備に向けたプロセスを積み上げていきました。
馬は繊細な動物。そのことに、どこまで配慮できるか。
当初予想もしていなかった困難もありました。馬がパドックから本馬場に入っていく時には、当然ながらそのための出入り口があるんです。その出入り口が、ちょうど左回りコースで馬が第3コーナーを回っていく時の視線の先にあることがわかったんです。そうすると、馬がゴールじゃなく、そちらの方を向いてしまうんじゃないかという恐れが出てきまして、出入り口の位置を少しズラすという対応をしました。
馬というのは非常に繊細な動物ですので、いろいろな新しい刺激に対して敏感です。その辺りを考慮した上で、主催者の方々や調教師の方々の意見をよく伺いながら、計画を進めていきました。
いままでよりもさらに多彩なレースを。多彩な楽しさを。
もともと大井競馬場は、地方競馬の中でもゴール前の直線が長いことで知られています。今回新設された左回り1,650mのコースでは、右回り1,600mのコースよりもさらに直線距離が長く取れるので、そこにも着目して楽しんでいただきたいなと思います。
また、大井競馬場は単なる競馬場ではなく、「アミューズメントパーク大井」として、イルミネーションやウマイルスクエアなどさまざまなイベントを開催してきました。みなさまが再び競馬場に集まれる状況になれば、また新しい取り組みでお迎えしていきたいと考えています。
競馬の世界では、インターネット投票という楽しみ方が定着した一方で、現場で観戦しなければ味わえない魅力もあります。ですので、ぜひ競馬場の方にも足をお運びいただきたいなと、私どもは考えております。