Race History
〜ザッハーマイン〜
今年で10回目の開催となる東京シンデレラマイル。3歳馬や古馬の一線級牝馬が顔を揃え、毎年ひと筋縄ではいかない一戦。過去9回の勝ち馬の中で、一番人気に応えて見事勝利を掴んだのはザッハーマインただ1頭。
初めて同馬を見たのが08年に行われた第5回TCKディスタフ。現在のレディスプレリュードだが、当時は地方競馬のみの交流戦。園田デビューで3戦3勝、鞍上には当時の南関リーディング戸崎圭太を配しての参戦。戦前はさすがに厳しいのではと思っていたが、結果は4着で勝ち馬とはコンマ差の健闘。続く交流重賞のクイーン賞では地方馬最先着の5着とフロックではないことを証明。しかもキャリア5戦目ということを考えれば衝撃的だったことは今でも記憶に残っている。
その後は戦いの舞台をJRAに移し、11戦3勝。ハイレベルの戦いの中でも着外は僅か1回のみと非常に優秀な成績を引っ提げて、船橋の出川克己厩舎へ転厩。これまで疑いようのない成績で、今後の南関牝馬路線を牽引する存在であったことは間違いなかった。
迎えた緒戦は10年10月のTCKディスタフ。新たな鞍上に的場文男騎手を迎えての参戦。『以前こちらに使いに来た時にいい走りをする馬だと思っていた。当然、跨った時の感触も良かったし、返し馬をしていて走る馬だと感じたよ』とその当時について的場騎手。半年ぶりの実戦で人気こそ地元の3歳馬ハーミアに譲ったが、直線ではライバルを突き放して快勝。続くクイーン賞では後の女王ミラクルレジェンドを相手に逃げの手に出て2着。後続に6馬身は決定的な差で、交流重賞制覇も視界に入る一戦だった。
これだけの実績を残していれば人気を集めるのも当然で、東京シンデレラマイルでは単勝1.3倍の圧倒的な支持を集めての出走。馬格があるとはいえ、牝馬で58キロという斤量は楽ではなかったが、終わってみればメンバー最速の上がりタイムを駆使して完勝。『斤量は背負ったけど、自分のレースさえできれば強さを発揮してくれると信じていた』と的場騎手。強さだけが際立つ結果となった。
翌年のTCK女王盃では、悲願の交流重賞Vとはならなかったが、地方馬最先着の4着と健闘。南関牝馬重賞のしらさぎ賞ですかさず巻き返すと、続く川崎マイラーズでは牡馬の一線級相手に勝利を掴み重賞連勝。秋以降の活躍が期待されていたが、復帰戦となったマイルグランプリで10着と思わぬ大敗。その一戦を最後に現役引退となった。
通算23戦10勝、うち重賞4勝と輝かしい成績を残したが、驚きなのは着外に敗れたのが僅か2戦のみということ。戦歴を考えれば非常に優秀な成績だ。『重賞で4勝もさせてもらったし、有り難いね。産駒もデビューしていると聞いているので、機会があれば是非騎乗したい!』と的場騎手。叶わなかった夢の続きは産駒へと託されることになった。
昨年は荒山厩舎を代表する看板馬同士の一騎打ちで見応えあるレースが繰り広げられた東京シンデレラマイル。記念の10回目となる今年もまた新たなドラマの幕が上がる。
ケイシュウニュース 藤田裕之