東京シンデレラマイル

名馬ヒストリー

 近年、芝・ダートを問わず牝馬の活躍が目覚しい。ダートに絞った話でも、ラヴェリータ、ミラクルレジェンド、クラーベセクレタ、メーデイア、ワイルドフラッパー、サンビスタと途絶えることなく毎年のように女傑と言える名牝が誕生している。牡馬との対戦では斤量面での優遇ももちろんだが、グランダムジャパンをはじめ路線の充実もおおいに関係していると思われる。さらには、日本の種牡馬に合う優秀で質の高い繁殖牝馬を輸入していることも、競走馬の底上げ、レベルアップにつながっている。TCKでも韓国馬との交流戦インタラクションカップや、東京大賞典が国際GIとなり海外馬にも開放と、世界とのつながりが密になってきている現在、さらなる躍進が期待される。

 TCK年末3重賞の古馬牝馬総決算として定着しつつある“東京シンデレラマイル”。過去の勝ち馬にはザッハーマイン、テイエムヨカドーなど一癖も二癖もありそうな馬が名を連ね、一筋縄ではいかない牝馬重賞の難しさを物語っている。そんな中、思い出深いのは2012年第6回東京シンデレラマイル2着のサクラサクラサクラ。同馬の父アッミラーレは重賞勝ちがないものの、ダートで快進撃を続けたサンデーサイレンス産駒。母コーエーガルボは日本ダービー馬ウイニングチケットの半妹という良血。期待を一心に背負って中央でデビューも芝4戦は大敗…。ダート転向後、時間はかかったが、未勝利・500万としっかり勝ち上がった。障害1戦を挟んで、ホッカイドウ競馬へ移籍。そこで、ライバル・ショウリダバンザイと出会い長らく凌ぎを削ることとなる。岩手・水沢競馬場で行われたビューチフル・ドリーマーカップで念願の重賞タイトルをゲット。これまで先着を許してきたショウリダバンザイを退けてのうれしい勝利となった。上々の成績を挙げ、オフシーズンは南関東へ。JBCレディスクラシックはあのミラクルレジェンド、クラーベセクレタを相手に粘りに粘って3着と、負けはしたもののロスのない完璧といえるレースだった。

 再転入初戦が第6回東京シンデレラマイル。あいにくの大雨で水の浮いた不良馬場。繊細な牝馬たちには過酷なレースとなったが、3コーナーから鞍上の森泰斗騎手が気合をつけて、逃げたエンジェルツイート、ミヤサンキューティを射程圏に捕らえて直線へ。この手ごたえなら”差せる”と誰しも思ったが、ミヤサンキューティの脚いろは意外にも衰えず、差は詰まらない。同じ脚いろになってしまい、2着でゴール。距離適性からも上回っていたはずだが、これもまた競馬…仕方ない。

 翌年、重賞で入着を繰り返し、クイーン賞では中央馬相手に2着と健闘。マイペースなら中央馬相手でも勝負になると言わんばかりの改心の逃げだった。

 第7回東京シンデレラマイルも自分の形に持ち込んでビタースウィート、レッドクラウディアに続く3着。馬場・距離を問わず、安定した走りで我々を魅了したサクラサクラサクラ。GIという大きな花は咲かせられなかったが、厳しい競走馬の世界でとてもきれいな花を咲かせたのは間違いない。 日刊競馬 鈴木宏哉

■サクラサクラサクラ
生年月日 : 2006年6月14日
血統 : 父 アッミラーレ
母 コーエーガルボ
生産 : 北海道沙流郡日高町・野島牧場
きゅう舎 : 森下淳平 (大井)
生涯成績 : 41戦7勝2着12回
主な勝鞍 : 第38回ビューチフル・ドリーマーカップ

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