レースヒストリー

クラーベセクレタ(2010年1着)

近年はネフェルメモリーやカイカヨソウ、昨年のララベルなど、クラシックで牡馬相手に互角の勝負を演じる馬を多数輩出。翌年のクラシックを占う上で欠かせないレースとなっているのが、今年39回目を迎える東京2歳優駿牝馬である。

こういった近年の勝ち馬の中でもひと際輝く実績を残しているのが、20年ぶりに牝馬による東京ダービー制覇を成し遂げた2010年の勝ち馬クラーベセクレタである。

クラーベセクレタもここ数年のトレンドにもれず、門別でデビュー。新馬、重賞と難なく連勝し頭角を現す。ちなみに新馬の2着馬は、後に交流重賞の北海道2歳優駿をV。この後は2戦続けて中央へ遠征する。結果は7、8着と振るわなかったが、2戦続けての中央への遠征は陣営のこの馬への期待の表れでもあったはず。地元に戻って即座に重賞V。勢いに乗った状態で、交流重賞エーデルワイス賞へ出走。しかしここでは、普段の先行策が取れず2秒差の4着に敗れる。並みの牝馬なら、このままずるずるとスランプに陥ってもおかしくなかったが、クラーベセクレタはここから華麗なる復活を遂げる。

南関東の名門、川島正行厩舎へ移籍したクラーベセクレタは転入戦としてこのレースを選んできた。当日の1番人気はここまで3戦負けなしのラカンパーナ。自身は前走の敗戦が影響して2番人気に。当日は当時南関東トップに輝いていた戸崎騎手を背に出走する。

レースは16番人気のチェリペタルがハナへ。クラーベセクレタは初コースを苦にすることもなく、しっかりと折り合い2番手をキープ。1番人気ラカンパーナは中団へ構える。隊列に大きな変化がないまま直線へ。直線入り口でも追い出しを我慢していたクラーベセクレタだが、残り200Mを切ったところで戸崎騎手が追い出すと抜群の反応を見せ、あっさり逃げ馬を交わし去る。残り100Mからは独壇場で、上がり最速をマークして2着に3馬身差をつけての完勝。好位からまったく危なげないレースぶりだった。走破時計1分40秒1は歴代最速のタイムで、前日の東京シンデレラマイルでザッハーマインがマークした1分39秒9に0秒2差まで迫る好時計。この開催は時計の出やすい馬場であったことを差し引いても、2歳牝馬としては優秀な時計で、翌年のクラシックでの活躍を予感させるものだった。

実際に3歳になってから、クラーベセクレタは周囲の期待にたがわない活躍をする。東日本大震災の影響で桜花賞が中止になり京浜盃へ出走するも、牡馬の一線級を難なく撃破。東京ダービーでも後続の追撃を振り切り、20年ぶりの牝馬による東京ダービー制覇を成し遂げ南関東牡馬2冠を達成する。次走は南関東3冠をかけ、ジャパンダートダービーへ。しかし、ここではグレープブランデー、ボレアスの中央勢2騎に先着を許し3位入線。加えて、レース後に禁止薬物が検出され失格となる不名誉な結果に終わってしまった。秋初戦のレディスプレリュードでも再び中央勢の壁に跳ね返されてしまう。しかし、ここで終わらないのがクラーベセクレタ。地方馬同士のロジータ記念を快勝後、交流重賞クイーン賞で始めて中央勢を撃破し、改めて力を見せつけた。

最終的に6歳の春まで現役を続行、4歳時にはJBCレディスクラシックで2着するなど活躍。5、6歳こそ精彩を欠いたものの、近年の南関東を代表する牝馬といえる実績を残した点は間違いない。そして、この名牝の原点は、まさに東京2歳優駿牝馬にあったと言っても言いすぎではあるまい。


森下 亮平
1987年4月16日生まれ。
東京都出身、血液型A型。

2009(平成21)年大学在学中にダービーニュースに入社、2013(平成25)年ダービューニュース倒産に伴い退職。
この間一貫して編集部地方課に在籍。
同年12月に勝馬の編集部に地方担当として入社、現在に至る。