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“地方対中央”の3歳ダート頂上決戦の位置づけとして定着したジャパンダートダービー。
 中央馬優勢の構図はなかなか変わらないものの、全国各競馬場で行われているダービーを制し集う各地方の有力馬。
 フリオーソ以来の地方馬制覇を夢見ている地方競馬フリークの私は、この全国決戦の様相が大きいJDDは数あるビッグレースのなかでも私がとりわけ好きなレースの一つである。
 今から8年前の2009年…まだ20代だった私はこの年の4月から大井競馬担当のTMとなった。競馬好きの私にとってこの仕事はまさに天職であり、慣れない仕事に四苦八苦しながらも、競馬場で一年間通じてほぼ毎日馬を見て仕事ができる幸せを噛みしめていた。
 大井TMになって最初の第11回ジャパンダートダービーは今でも鮮明に私の記憶に焼きついている。

当時から365日競馬漬けの毎日を送っていたが、新馬戦で後の京成杯勝ち馬アーリーロブストを豪快に差し切ったレース内容が強く印象残っており以降注目していたテスタマッタ。
 今では父Tapitは産駒が海外でもビックレースを数多く勝っているが当時はあまり知られておらず、テスタマッタは日本での初産駒だった。
 新馬戦勝利後は思うような結果が出せず、迎えた転機の一戦2009年5月31日、ロジユニヴァースが制した日本ダービー当日の6R。
 テスタマッタは初めてのダート戦に挑んだ。スタートで後手を踏みながらも直線は豪快に伸びて1着となり高い適性を見せ能力を再認識。
 次走も古馬相手に目の覚めるような追い込みで勝利し連勝でJDDに臨んだ。

スーニ、ゴールデンチケット、シルクメビウスと重賞勝ち馬が人気の中心で、テスタマッタは連勝中とはいえタイトなローテーション、1400M→1200Mと走ってからの2000Mへの距離延長など未知な要素もあり当日は4番人気だった。
 レースは同じ勝負服で一番人気のスーニを見ながら中団でじっくり脚を溜める。勝負所の3コーナーから4コーナー、前を行く馬たちは盛んに手が動き出したが、テスタマッタは距離不安もなんのその、抜群の手応えで直線に入り、馬群を裂いて馬場の真ん中を一気に突き抜け2着のシルクメビウスに2馬身差をつけて重賞初制覇となった。
 デビューから注目していた馬が自分の目の前で歓声を独り占めしている姿を、当時の記者席(現在のG-FRONT)から大興奮しながら、どこか誇らしい気持ちで眺めていた。
 村山明厩舎は開業2年目での重賞制覇。その後はTCKでもおなじみのダノンレジェンド、コパノリッキーをはじめ数々の重賞ウイナーを送り出し、今ではトップトレーナーの一人といっていい存在だ。
 その後フェブラリーS制覇をはじめ全国の競馬場の重賞で活躍し続けたテスタマッタは2014年の根岸S7着を最後に現役を退き、引退後は韓国へ渡り種牡馬となった。
 近年は大井と韓国では日韓交流レースが行われており、いつか交流レースでそしてTCKでテスタマッタ産駒が疾走する姿を楽しみにしている。

あれから8年、競馬を取り巻く環境は変化しているが、ここにきて競馬界が再び活気を取り戻している。地方、そして南関、TCKからスターホースが登場するのが待ち遠しい。
 そして今年のJDD。どんなドラマチックなレースが繰り広げられるか楽しみだ。

日刊競馬 市川俊吾