2010年から開始されたGRANDAME−JAPAN2歳シーズンの最終戦である東京2歳優駿牝馬。2016年ピンクドッグウッドが他地区馬として初制覇を飾り、全国交流として定着しつつあるが、ホッカイドウ競馬出身馬が近10年で8勝と猛威をふるっているレースでもある。レベルの高さをまざまざと見せつけられているが、生粋の南関東デビュー馬の勝利はララベルが制して以降現れていない。
南関東デビュー、東京2歳優駿牝馬勝ち馬で強烈なインパクトを残しているのが”ダガーズアラベスク”だ。翌年の牝馬クラシック三冠制覇が可能だと思わせるほど強さが際立ったレースぶりだったと記憶している。
川島正行厩舎所属のUAE産外国産馬。しかし父は日本でタイキシャーロックやオースミジェットなどダート重賞勝ち馬を多数輩出しすでに結果を残しているジェイドロバリー。母系も祖母がヒシアマゾンの半姉という我々にはなじみのある血統で、良血・名門・500キロ超えの好馬体の三拍子そろった美しい牝馬だった。
戦績はまさに波乱万丈。新馬戦は逃げたキングハバタケを捕まえきれず②着も、距離が延びた2戦目は10馬身差の圧勝。その後オープン戦を勝って挑んだ前哨戦・ローレル賞は相手が上がったものの、好位から抜け出して2着アーペレーヌに7馬身差。向かうところ敵なしの状態で東京2歳優駿牝馬を迎える。単勝1.2倍の断然人気。唯一の不安要素は初めてのTCK(右回り)ということくらい。
レースはまずまずのスタートから3番手の絶好位。逃げるアジュディストーリーに徐々に迫りすでに3コーナーでは射程圏に。直線では後方からアーペレーヌが猛然と追い込んでくるが振り切って難なく優勝。着差はこれまでに比べるとわずかながら、同世代には絶対負けないという執念、気迫の騎乗も全盛期の内田博幸騎手らしい競馬だった。
その後脚部不安で休養を余儀なくされるが、休養中、東京2歳優駿牝馬で下した(6着)チャームアスリープがなんと桜花賞、東京プリンセス賞、そして中央馬相手の関東オークスを制し、牝馬クラシック三冠達成。ダガーズアラベスクは悔しい思いをし、痛みにも耐え約1年ぶりに復帰を果たすが11着大敗。またしても脚部不安発症で1年休養、川崎遠征12着を最後に引退。
そんなダガーズアラベスクも母となり、今年8月には愛娘キンゲショウがJRA初勝利を飾った。志半ばで競走生活にピリオドを打たざるを得なかったが、こどもたちが夢の続きを見させてくれることを願う。
日刊競馬 鈴木 宏哉