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“無敗の東京ダービー馬と石崎隆之”

今年の3月15日、「船橋の名手」石崎隆之騎手が45年の騎手生活に別れを告げた。

石崎隆之騎手と言えば通算6269勝で地方歴代3位の勝利数、その内、重賞勝鞍数189を数えるレジェンド。代名詞のアブクマポーロを筆頭に数々の名馬の手綱を取り、東京ダービーでは1992年のグレイドシヨウリを皮切りにサプライズパワー、ナイキアディライト、そして引退会見でも名前が出た無敗の4冠馬トーシンブリザードで計4勝。平成初期の南関東競馬は、正に石崎時代であった。

そのトーシンブリザードとは2戦目からコンビを組み、3戦無敗で全日本3歳優駿(現在は全日本2歳優駿)を制覇。年が明けても勢いは増すばかりで、京浜盃、羽田盃とライバルのフレアリングマズル、ゴッドラヴァー達を寄せ付けず連勝を伸ばし、当時は東京ダービーとの間にあった2冠目の東京王冠賞も制して、6戦無敗で大一番の東京ダービーを迎えた。

当然のことながらトーシンブリザードは単勝110円の圧倒的1番人気。当日は折からの雨で不良馬場とコンデションは最悪。15番枠と不利な枠順でもあったが、ゲートをポンと出るとスッと2番手を取り逃げるフレアリングマズルをピッタリのマークする絶好の展開になった。レースは淡々と進む中、石崎騎手とトーシンブリザードの息はピッタリで、向正面、3コーナーと過ぎ、4コーナーでは少し手綱が動いたが、直線半ばには抜け出し、最後は突き放して2着のゴッドラヴァーに4馬身差をつける圧勝。平成元年のロジータ以来の3冠達成で、無敗は史上初だった。

続くジャパンダートダービーでもJRAの強豪を退け、「東京の真夏の夜にブリザード圧勝~」という名実況とともに見事、最初で最後の「無敗の南関東4冠馬」に輝いた。トーシンブリザードはその後、東京大賞典まで休んで3着。古馬になっての緒戦ではJRAのフェブラリーSに遠征して2着と活躍したが、クラシックロードほどの輝きはなく、5歳春(現4歳)のかしわ記念を勝った以外は未勝利に終わった。ちなみにトーシンブリザードが猛威を振るった2001年は日本の競馬界にとっても歴史的な年で、2000年まで数え年で表記された馬齢表記を、国際的な表記である満年齢に変更する出来事もあった。

今年は羽田盃を圧倒的な強さで勝利したミューチャリーが2冠達成に臨むが、ポテンシャルの高さはトーシンブリザードにも劣らない名馬候補。令和元年、3冠馬誕生に期待したい。

競馬ブック 齊藤 大輔