2005年のJRA春のクラシックはディープインパクト一色。圧倒的な強さとカリスマ性で難なく二冠を達成。その快挙から程なくして、ダート界にも砂のディープインパクトと言われた牡馬が現れた。その名は「カネヒキリ」
後に無敗の三冠馬となるディープインパクトと同じ勝負服で、鞍上も武豊騎手。実際には5戦目の毎日杯からコンビを組んでいるのだが、カネヒキリの背中には 武豊騎手というファンも多いだろう。デビューから芝を2戦して勝ち切れず、初勝利は3歳となった緒戦の京都ダート1800メートルの未勝利戦。2着に7馬身差をつける圧勝で、続く500万(現1勝クラス)も1秒8の大差で連勝した。この時点ではまだ芝のクラシックに未練があったようで、次走には前述したように毎日杯をチョイスし、ここで武豊騎手の手綱となったが、7着で芝には見切りをつけた。
カネヒキリの第二章。伝説が始まるのはここからで、オープン特別の端午ステークス、重賞ユニコーンステークスと連勝。このあたりから砂のディープインパクトと呼ばれ始めたのを筆者は記憶している。圧倒的な砂での強さでここまでダートでは4戦4勝。奇しくも南関東でも羽田盃、東京ダービーと二冠を達成したシーチャリオットとの直線対決を待ち望んだファンも多かったことだろう。しかし、シーチャリオットは無念の骨折で三冠目の舞台には立てず。こうして2005年のジャパンダートダービーはカネヒキリ一色でレース当日を迎えた。
単勝1・1倍の圧倒的1番人気に支持されたカネヒキリ。レースでは涼しい顔で好位から4角先頭の横綱相撲で楽に抜け出し、同世代に敵なしの走りを見せ、正に「砂のディープインパクト」のように直線で「飛ぶように」後続を完封。シーチャリオットが出ていれば世紀の名勝負となっていただろう。その後の活躍はファンの皆様もご存知の通り。歴史に残るダートの名馬、種牡馬として優駿スタリオンステーションにて繋養されていたが、2016年に種付け中の事故によりこの世を去った。14歳没。
競馬ブック 齊藤 大輔