第65回 東京大賞典 GI 2019年12月29日(日)10R 15:40発走 第65回 東京大賞典 GI 2019年12月29日(日)10R 15:40発走

レースヒストリー

1994年12月23日。祝日で大井競馬場に多くの人が詰めかける中、第40回東京大賞典が行われた。11頭の馬たちが馬体を並べてゲートが開く瞬間を待つ。 東京王冠賞(当時のクラシック3戦目)を勝利してここに駒を進めた、1番人気の4歳馬(現3歳)ドルフィンボーイの手綱を取る山崎尋美騎手(現調教師)は「2800mでドルフィンボーイと折り合いが付かなかったら距離は持たない。とにかく馬とけんかをしない」ということだけに注意を払った。

スタートしてハナを切ったのはそのドルフィンボーイ。
「最初は行きたがっていたけど、“ほーらほーら”と馬を落ち着かせるように声を出しながら乗っていたら、途中で落ち着いてくれた」という。
最初は3~4馬身のリードでの逃げだったが、スタンド前を通過して向正に差し掛かる辺りでは10馬身ほど離しての一人旅。

しかし簡単に逃げ切り勝ちはさせまいと徐々に後続馬も差を詰め、3コーナーに入ってからはウィナーズステージが迫ってきたが「外から馬がきてグッとハミがかかった。まるで2段ロケットのような感じだね。4コーナーに入ってからは勝利を確信した」とまったく不安は感じなかったという。

その言葉通り直線を向いても、ライバルたちに先頭を譲ることはなく堂々の逃げ切り勝ち。
「川崎競馬場では誰もが知っている気性が悪い馬」と悪評高きドルフィンボーイは、古馬相手に東京大賞典制覇という大仕事をやってのけた。

1993年11月にデビューしたドルフィンボーイは初戦こそ5着に敗れたが、2戦目で2着馬を1秒以上突き放して初勝利を挙げると、続くクラウンカップでは再び1秒以上の差を付けて素質を開花させた。
ところが羽田盃、東京ダービーのクラシック2戦はいずれも2桁着順と惨敗する。
そしてデビューから6戦目となった新秋特別からタッグを組むこととなったのが、山崎騎手だった。「まともに返し馬もできないような馬で、最初頼まれた時は渋々乗った感じ。だけど半信半疑だった戸塚記念を勝ってくれて力を確信した。普通の馬だったらレース展開を心配するけど、ドルフィンボーイに関してはそういう心配は一切ない。能力はあるから、とにかく馬との折り合いだけを考えればいい。後にも先にもこんなタイプの馬には乗ったことがないね」と当時を振り返る。

「今でもドルフィンボーイで東京大賞典を勝った時のレースは鮮明に蘇る。騎手時代に色んな馬に乗ったけど、これほど思い出に残っているのはドルフィンボーイと、1987年に金盃を勝ったミハマシヤークくらいかな」と今から25年前の歓喜を懐かしんだ。

勝馬 豊岡 加奈子