• TOP
  • TCK STORY

TCK STORY
TCKストーリー

〜ライブ配信への挑戦〜

大井競馬の楽しさを
みんなで共有できる場を
つくりたい

システム課
事務
Y

2022年度新卒採用(2024年4月より主にウマきゅんとシステムの連携を担当)

広報課
事務
N

2020年度新卒採用 港区役所入庁/2024年度より特別区競馬組合に派遣(2024年4月よりメイン担当としてプロジェクトを推進)

競走課
競走企画担当係長 事務
I

2014年度新卒採用(プロジェクト発案者。立ち上げから2024年3月まで中心的役割を担う)

競馬場に足を運ばなくても、様々な方法で競馬が楽しめるようになった昨今、TCKではネット広報に力を入れる一環として、2021年ライブ配信番組「ウマきゅん」をスタート。大井競馬場でのレース開催に合わせて、視聴者に親しみやすい番組を配信してきた。今回は、プロジェクト発足に携わった初期メンバーと現メンバーの話を通して、ウマきゅんの軌跡と未来を探る。

職員の想いから生まれた
新たなプロジェクト

新型コロナウイルス感染症の感染拡大がはじまった2020年、競馬場への入場が制限され、多くのお客様はインターネット投票を利用していた。TCKがネット広報に注力しようと大きく舵を切る中で、職員に対してアイデアの公募が実施される。そこで、後に「ウマきゅん」プロジェクトのリーダーとなる係長のOさんとともに手を挙げたのがIさんだった。以前お客様サービスに関わる部署で一緒に働いていたこともある2人は日頃から距離が近く、広報施策について語り合う仲。当時を振り返り、Iさんは語る。「大井競馬の楽しさをファン同士で共有できる場をつくりたい。それが共通の想いでした」
コロナ禍において、無観客での競馬開催が断続的に続き、お客様同士が会話しながら競馬を楽しむことが難しい時期が続いていた。そんな状況を少しでも変えるため、ネット空間に新たな場をつくろうと、YouTube配信を基軸にしたライブ番組を提案。その他複数の提案がある中、「ウマきゅん」案が採用され、プロジェクトがスタートする。だが、その後、思いもよらぬ試練が2人を待ち受けていた。

視聴者との距離感を大切にした
番組づくり

企画採用が決まった2021年3月。いきなり6月のビッグレース「帝王賞」で配信を開始するという使命が課される。おおよそ3ヶ月という短い期間で、すべての準備を整える必要があった。そんな中でIさんは、「期間が短いのは厳しかったが、私自身は苦労よりも前向きな気持ちの方が強かったです」と言う。急いでIさんとOさんは体制づくりを始める。広報との連携を図るため、広報課職員2名がチームに参加し、さらに若者と競馬初心者の視点を取り入れるため、入庁して間もないシステム課職員2名も加える。また、以前から親交のあった映像制作会社もアサイン。チーム一体となって施策の具体化を進めていった。番組コンセプト、出演者のキャスティング、配信ルールづくりなど、話し合いを重ねて決定していく。

特にIさんとOさんが大切にしていたのは、番組コンセプトである「できる限り視聴者のみなさんと距離が近く、ゆるい雰囲気で競馬を一緒に見ている感覚をつくること」だった。これは、チャット機能を用いた視聴者とのコミュニケーションや、競馬初心者にも分かりやすい番組づくり、出演者の選定基準にも反映されていった。
番組名の決定にも相当な苦労があったという。メンバーや映像制作会社がそれぞれ案を出し合ったものの、なかなか決まらない。数日間の議論の中で最終的には女性職員の提案が採用され、響きと直感から「ウマきゅん」に決まった。苦労の甲斐もあり、やがて多くのファンから親しまれる番組名になっていく。「YouTubeライブ配信ということで若年層の視聴者も意識していたため、若手職員のアイデアと経験豊富な中堅職員の意見をうまく融合することが重要でした」と調整役として奔走したIさんは振り返り、番組が無事にスタートできた要因となったと語っている。

視聴者の声に耳を傾け、学びをカタチに

チームでトライ&エラーを繰り返し、なんとか迎えた初回配信。その日を振り返り、Iさんは、「どれくらいの方が見てくれるか気になりましたし、ライブ配信なので放送事故や機材トラブルが起こらないか、ヒヤヒヤの方が大きかったです」と微笑む。配信のクオリティに課題は残ったものの、大きなトラブルもなく「帝王賞」を含む5日間の配信を乗り越えた。安堵するのも束の間、チームは再始動する。「番組スタート直後は改善点がたくさんあり、すぐに修正しなければならないと焦っていたことを覚えています」(Iさん)
会話が盛り上がらなかった場合には、出演者のキャスティングや組み合わせを見直すなど、チームで改善点を出し合ったという。出演者を2人から基本3人に増やしたのも番組開始直後の変更点だった。このような経験を通して、「配信中にチャットでご意見やご要望をダイレクトにいただけるため、競馬場職員としてお客様の声を敏感に感じ取る癖がつきました」(Iさん)
その後も改善を重ねた結果、当初は数百人だった視聴者も1,000人、2,000人と徐々に増加し、年末には同時視聴者数は1.5万人を記録、チャンネル登録者数も3万人を突破した。

2024年ウマきゅんに訪れた新しい風

日進月歩でファンを獲得していたウマきゅんに、2024年、転機が訪れる。プロジェクトの開始から3年が経過し、Iさんが部署異動となる。それに伴い、広報課からNさんが、システム課からYさんが新たにプロジェクトに加わる。「私が他区から派遣で来たこともあり、ウマきゅんどころか競馬そのものを一から学ぶ必要がありました」と語るNさんは、周囲のサポートを得ながらメイン担当としてプロジェクトを進める役割を担う。一方、Yさんは、「キャスティングの検討や会議への参加はもちろん、ネット投票とウマきゅんのシステム連携や宣伝を担当しています」と語る。

担当は変わっても大切なものは受け継がれる。例えば、ゆるいトークを繰り広げながら競馬の予想をお届けするという番組の考え方や、競馬開催の翌週に行われる番組スタッフとの反省会などだ。一方で、今年から新たな試みも始めた。「大井競馬をもっと好きになってもらうきっかけづくりとして、騎手や厩務員、さらには調教師の方々のVTRでの出演回数を増やし、人柄を伝えることで、視聴者の興味を深めたいです」(Yさん)
競走馬を取り巻く背景を紹介することで、視聴者の関心を集める工夫だ。「視聴者に、騎手や調教師のありのままを感じてもらえるよう取材を行い、番組内で放映しています。取材を依頼する際、みなさん快く引き受けてくださります」とNさん。

継承と変革、新時代の幕開け

Iさんからバトンを受け、プロジェクトを継続する中でも挑戦は続く。Yさんは語る。「視聴者を増やし続けるためには、新しい企画や要素を取り入れ、常に変わり続ける必要があります」とYさんの言葉からはさらなる進化への姿勢が窺える。「同じことをしていては必ず停滞しますし、課題を改善しないといつか視聴者に飽きられてしまいます」と危機感をにじませる。
Iさんも「これまでも、現状維持は絶対にせず、新しいことをやり続けていくことをかなり意識してきました。ゲストや企画も新しく」と続ける。ウマきゅんがスタートした当初から反省会で課題を洗い出し、常に改善を重ねて歩んできた。その点は新しい世代にも引き継がれているようだ。

出演者のキャスティングには特に心を砕いている。トークを盛り上げるため競馬に精通するMCはもちろん、時代を彩る旬な芸能人に依頼をかけ、これまで実現にこぎつけてきた。今、Nさんが試みるのが、様々なゲストのキャスティングである。「多くの視聴者に楽しんでもらうため、幅広いジャンルのゲストをお招きしています。ゲストに出演していただくことで、新たな層の視聴者が見てくれますので」(Nさん)
また、「キャスティングでは、時に映像制作会社と意見が合わないこともあります。そんな時は、なぜその方に出演してもらいたいのかなど想いを伝え、お互いが納得するまで話し合います」とYさんは言う。

全国とつながるウマきゅんの魅力

ウマきゅんプロジェクトは苦労がある分、それ以上にやりがいを感じることも多い。「視聴者プレゼントに応募するためのアンケートを読むと、好意的な意見が多く、とてもうれしくなります」とNさん。多い時には1開催で600件を超える視聴者アンケートは、住んでいる地域や年代など参考になる情報も多く、毎回、目を通しているという。「最初、応募者の居住地は東京が多いと思っていたのですが、北海道から沖縄まで日本各地からの応募があり、全国からウマきゅんを見てくれているのだと驚きました。遠く離れた地域ともつながれるのは、ウマきゅんならではだと思っています」(Nさん)
Yさんも、視聴者とつながる瞬間に魅力を感じている。「ウマきゅんとネット投票が連携したことで、出演者の予想にマルっと便乗して馬券を購入できる『マルノリ投票』という仕組みができました。出演者と同じ気持ちになれたり、視聴者同士で連帯感が生まれたり、一緒に盛り上がれるのが、すごく面白いです」と熱く語る。

未来へ、さらに愛される番組を目指して

2024年秋の時点で、チャンネル登録者数が13万人に迫る中、これからの抱負を尋ねた。「競馬初心者の方が、ウマきゅんを通して競馬に興味を持ってもらうきっかけになるとうれしいです」と言うNさん。「1人でも多くの人に見てもらい、TCKを知ってもらう足がかりとなる番組になってほしいです」とYさんは意欲を見せる。
さらに、活躍の場を広げる野望を抱く。「もっと人気が高まればYouTubeだけでなく、他のプラットフォームでも配信し、様々な場面で目に触れる機会をつくりたいです。それだけでなく、競馬場を飛び出して人の集まる場所でのイベント企画などにもチャレンジしたいです」(Yさん)
コロナ禍という逆境において、ネット上で人々をつなげたいという想いでスタートしたウマきゅん。さらなるファン獲得に向けて、リアルな世界での人々との交流にも積極的に挑戦しようとしている。

2024年春までプロジェクトに携わってきたIさんは、NさんとYさんの話を聞き、安堵の表情を浮かべる。「番組が当初から大事にしてきた考えが2人にも浸透していて、安心しました。時代は変わり、再びリアルな場で人と接する重要性が増しています。ウマきゅんを通して競馬に親しみを抱いてもらい、最終的には大井競馬場に足を運んでほしいと強く思っています」(Iさん)
担当は変わっても、ウマきゅんがこれまで大事にしてきたDNAはしっかりと受け継がれ、この先も続いていくだろう。ウマきゅんは人々を楽しませるため、これからも進化していく。

※掲載の内容は2024年取材時のものです